Tokyo HideOut

アラフォー外資系金融勤務のゲイHideが描く日常

自己承認2 - ウェイトトレーニングの先に有るもの

大学時代バイト先のI先輩は、学生という身分にも拘らず個人家庭教師で給料を稼ぎ、その殆どを高い服に使っていた程のお洒落な人だった。モッサい眼鏡男だらけの大学のキャンパスで、シンプルでいて良質な素材で作られているであろうジャケットや靴を身に纏っているI先輩は、僕の中でも憧れの存在だった。そんなある日、バイト先の飲み会での会話の中、誰かがI先輩に、「I先輩の持ってる服が火事で全部燃えたらどうしますか?」「そんなん俺絶対に死ぬわ!」

 

死ぬ、と言った彼の表情は大真面目だった。それほど彼は自分が身に付けている、トリッカーズのブーツやオーシバルのボーダーシャツを愛していた。自分のお気に入りの服や靴、鞄は身につける事で、ある種の自信をもたらしてくれるものである。服や靴がI先輩の存在の大部分を担保していたとも言えるだろう。

 

そんなI先輩に「新宿のゲイバーで偶然会った!」と大学時代から仲良くしているゲイ友から連絡があった。外見に気を遣い年下の可愛い後輩男子を囲う癖があったI先輩は、大学時代から僕の中の「絶対にゲイ」リスト入していただけあって、「へーそうか」というだけの事だったが、驚きだったのは有り得ない程にマッチョになっていた事… そこまで身長が高くないI先輩が身体を鍛えると、どう見ても筋肉ダルマにしか見えなかった、と友達は言っていた。

 

僕らはどこまで行けばコンプレックスをなくせるのであろうか。ゴールドジムで鍛えている男の40-50%はゲイだが、果たしてそのウェイトトレーニングに終わりは有るのだろうか?高い服の次はトレーニングで筋肉を見にまとう事を選択したI先輩。しかしながら残念な事に、東京に出て来たI先輩はさらに嫌味な関西人のオバちゃんと化していて、先輩に会った僕のゲイ友のファッションの駄目出しをしまくっていたという。

 

「卑屈なところは結局何も変わらへんな!」とゲイ友が吐いた彼のフィードバックは理解できる。外見を変えるのは手っ取り早いが、結局は何も変わらない。逆に弱い部分(I先輩については根が卑屈な所か)が際立ってしまう。

 

僕も含めて、I先輩にも必要なのは、筋肉や高い服身に付けてなくても、面白いから好きだとか、一緒にいると落ち着くだとか、そういう要素なんだと思う。在り来りな結論しか今の所は出せないが、そうやって素の自分を受け止めてくれるコミュニティが無ければ、自分の欠点を含めて自己承認ができないまま、卑屈な自分を続けて行くことになるだけだ。筋トレも顔面骨盤矯正も逆効果だ。

 

ゲイ友でもみんな同じ格好をするのは結構だが、たまには股間にぶら下がっている物体と筋肉以外の話をして、お互いの存在を認め合って生きて行ったほうがいい。結局みんなジジイになって、お互いが見苦しい中死ぬまで助け合わないといけないのだから…

 

(本日の一軒)
富ヶ谷 PATH
八幡商店街に在るおしゃれなローカルのためのカフェ。僕はここのコーヒーが好きだ。ここでダッチパンケーキなるものを初めて食したが、プロシュートとモッツァレラチーズが乗ったパンケーキにメープルシロップをかけて食べる。しょっぱいものに甘いものは意外と合うのだ。それに合わせるちょっと苦めのコーヒーは格別。フードの種類もそれなりにあって、ディナーでも楽しめる使い勝手の良いお店。

 

PATH
03-6407-0011
東京都渋谷区富ヶ谷1-44-2 A-FLAT 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131810/13190786/