Tokyo HideOut

アラフォー外資系金融勤務のゲイHideが描く日常

ダウントンアビーSeason6とゲイカミングアウトの件

NetflixとHuluでやっとリリースとなったダウントンアビーの最終シーズンであるシーズン6。前回シーズン5と同じ年代で1925年の第一次世界大戦第二次世界大戦戦間期を描いたシーズンである。シーズン6では労働者階級の台頭と貴族の没落が顕著となり、舞台であるカントリーハウスのダウントンアビーでも人員の削減を余儀無くされる時代となっていた。実際の使用人の中にも、貴族階級の特権を疑問視するセリフがここそこに散りばめらてており、シーズン6は、世の中の移り変わりと人々の心情の移り変わりを表している秀作であると言えよう。

 


Downton Abbey SERIES FINALE (Christmas Special 2015) (6x09)

 

シーズン6は他のシーズン同様、最終回がクリスマススペシャルとなっていて、クリスマス新年の祝賀ムードの中、これまで不幸続きだったダウントンアビー領主であるグランサム伯爵の次女レディー・イーディスが、最愛の伴侶と結婚式を挙げ、ハネムーンへと旅立つシーンで幕を下ろす。

 

貴族生活の没落が目に見えていて、現状生活を維持できないと認識ているグランサム伯爵は「何事にも柔軟にならねばならない」という信条の元、これまでの伝統を打ち破るように、屋敷の一般公開であるオープンハウスを実施したり、女性の社会進出を促したりするような言動に徐々に変わっていく。特に注目すべきは、最終回のクリスマスパーティーの中で、ゲイの副執事だったトーマス・バローを、執事へと昇進させることであろう。

 

1925年当時のゲイはどんなに寂しい生活をしていたであろうか。トーマスは迫り来る人員削減の中、副執事は必要ないとのことで幾度となく退職の意向を迫られる。ダウントンアビーに10年以上勤め上げたトーマスにとって、ダウントンアビーは初めて自分の性向を黙認しながらも、仕事をさせてくれた貴重な職場。彼のセリフで「やっと根を下ろしたという実感があったのに、去れというのは酷すぎる」と有ったが、当時のゲイからしたらダウントンアビーのような職場は如何に貴重で有っただろうか。

 

将来の不安に駆られ裏口で泣いているトーマスを見つけたメイド長のミセス・ヒューズは「きっと将来貴方に相応しい人が現れると信じているわ」と優しい言葉をかける。紆余曲折はありながらも最終的に由緒あるカントリーハウスの執事へと昇進したトーマス。彼の同性愛者としての性向知りながらも、経験と実績を認め、屋敷の執事へと昇進させる案を提案したグランサム伯爵の寛大さと先進さにいたく感動した最終回なのであった。

 

海外の友人の中には、性向で差別するなんてありえない、結果出せばそれでいいじゃんと言う友人が居る。それは正しい。しかし、あまりにも日本企業の現実を見ていない。日本社会全体でもカミングアウトができるような柔軟な社会とは言い難いし、周囲の醜聞を歓迎するように足を引っ張ったりするのが好きな輩が非常に多いのが現状だと思う。若い世代の中では少しつづ変わりつつあるようだが、周囲のストレートの友人達を見ても「ゲイの友達はヒデが初めて」と言う友達も少なくない。それ程、カムアウトのハードルが高いと言うのが現実だろう。

 

為政者側にもそれは問題があって、昨今でやっと言われるようになったLGBTという言葉がそれを表して居るようにも思える。しかし、ゲイである我々が(前線辞職はしましたが・・)周囲にカミングアウトをして、存在を知らせていかない限り周囲の認識も変わりはしない。我々が臆病になっていては何も始まらないのである。

 

家族へのカミングアウトは非常にリスキーで怖いものだ。あるカトリックの家族の事例では、両親にカミングアウトをした米国の少年がパスポートを取り上げられてメキシコに「男になってこい」と置き去りにされたという事例をとある本で目にした。両親へのカミングアウト、特に保守的な社会層でのカミングアウトは思いとどまる必要があるものの、その他の近親者へのカミングアウトはどうだろうか。若干ハードルは下がるのではないだろうか。

 

僕は7月に兄と彼の奥さんにLINEでカムアウトをした。きっかけは5月に東京で出会った父親の老衰具合に驚かされたというのが直接的な理由である。そこまで大きな病気ではなかったものの、3月に手術を行い快復をして退院した父親は、痩せこけてそれまで僕が知っている父親とは全く違っていた。東京で両親に出会った瞬間によぎった「父親の死」という現実的なシナリオ。高校卒業で実家を出て、両親とは距離を置いてきた自分。高校生の時から血色がよく、会うたびにお勧めの本を教えてくれた父が、確実に年をとっている。今後、両親の介護や看病などの現実的な問題が出てくる中、誰かに自分の今のライフススタイル、現状を伝えておく必要があるのではないか、と思った。距離的には離れているが、ちゃんと気にかけていて、何かあったら助けたいと思っているから、と知って置いて欲しかったのだ。距離を置いていた理由も、自分がゲイだったから、という事だったということも。自分勝手とは十分承知しているが、今後は責任も分担しますという事を兄夫婦に伝えたかった。

 

LINEでの兄の奥さんの反応は非常にライトなものだった。いや、そうかなーと思ってたよ、と。8月に実家に帰る予定があるのだが、その時会ってまた話そうね、と簡単に締めくくられていた。兄はどのような反応を示すだろうか。お互いドライな関係だったから、あまり感情的な話はないかもしれない。でもね、やっぱり最後の最後、誰かに振られても、会社に見捨てられても、最後は味方になってくれる人が欲しかった。両親に素直に甘えることも正直に自分のことを話すこともできないが、家族とどこかで繋がっていたかった自分がこの35年間ずっとどこかにいて、誰かと恋愛をするたびにその想いが爆発していた。今回はこの想いに正面から向き合うことにした。兄達とどのような会話がなされるかはわからないが、成り行きに任せて彼等を信じようと思う。

 

(本日の一件)

ひき肉少年 白金高輪

麻婆豆腐飯でもないカレーでもない不思議な鶏ひき肉ライスのお店。パクチーとバーナーで炙ったチーズのミックスが絶妙な一品。適度なスパイシー感で東南アジア感も満載。毎度ひしめき合う店内はカウンター6席だけとシンプルだが、テイクアウトで周辺公園での白金ランチも秋口はお勧めコース。

 

ひき肉少年

03-5420-1929
東京都港区白金1-11-15 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131602/13162597/

 

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